2012/06/22追記:この記事を書いた当時とは違って、現在の Debian/GNU Linux 7.0 wheezy では、UTF-8 で書かれたソースファイルに対応した TeX Live 2012関連パッケージが用意されています。特に拘りが無い限りは Debian公式で用意されたパッケージを利用するのが TeX環境を整えるのには簡単です。
「同人誌を作り PDF形式のファイルにして印刷所に入稿する」なんて予定は全くありませんけども、Debian/GNU Linux 7.0 wheezy上で Tex Live 2011, GIMP 2.6.11, GIMPプラグインの Separete+ を使って DTP環境を整えてみました。印刷所に入稿可能な状態(もちろんプリンタに出力して印刷出来る状態)の PDFファイルを作るのが目的ですので DTP と言ってもデスクトップパブリッシングというよりはデスクトッププリプレスの方がより適切な表現かもしれません。
現時点では Debian/GNU Linux 7.0 wheezy で配布されている TeX関連パッケージは古過ぎて、UTF-8 で書かれた TeX のソースファイルを扱えません。昔ならともかく、Linux での日本語環境が UTF-8 を前提としたものに移行してしまっている現在では、Debian/GNU Linux 7.0 wheezy で配布されている TeX関連パッケージをインストールして使うのは不適切です。
そこで TeX Live の公式サイトからインストーラを持ってきてインストールします。インストールの詳細については、
という、とても親切にまとめられたサイトがありますので、そちらを参考にして下さいませ。
それに付け加えてインストール時のオプションでは、
<O> options: [] create symlinks to standard directries
にチェックを入れて、/usr/local/bin/ や /usr/local/man/ にこれからインストールされる TeX Live の実行ファイル群や manファイル群 へのシンボリックリンクが作るのをお勧めします。これを済ませておけば、.plofile で環境変数の PATH や MANPATH を追記する手間も省けます。うっかり忘れても、
$ sudo /usr/local/texlive/2011/bin/i386-linux/tlmgr path add
で後から作る事も出来ますが、どうせならインストール時に済ませておいた方がラクチンです。Emacs上で YaTeX を使って TeX のソースファイルを編集する場合に wheezy で配布されている yatexパッケージをインストールすると、依存関係で wheezy の TeX関連パッケージがどっさり入る事になります。混乱のもとですので wheezy の yatexパッケージは使わないようにしましょう。どうしても YaTeX が使いたければ、YaTeX公式サイトから持って来たものを自分で適切に配置して使いましょう。
また、dvipdfmx で PDF へのフォントの埋め込みを行うので、埋め込み用のフォントマップファイルを用意しましょう。ぽちは上記参考サイトの日本語フォントのセットアップのフォントマップの作成から、IPA ex 明朝 / ex ゴシックフォントを埋め込むフォントマップを持って来て、/usr/local/texlive/texmf-local/fonts/map/dvipdfm/ に置いています。
最後に、TeX Live 2011 に入っている以外の好みの styファイルを ls-R の通る場所に置いてみます。ぽちの場合は、縦書きルビ振り用に TeX/LaTeX Applications by Shinsaku Fujita から furikana.sty を持って来て /usr/local/texlive/texmf-local/tex/latex/local/ に置いてみました。そのままの状態の furikana.sty を UTF-8環境で使うと全角アットマークの@がルビに重ね打ちされてしまうので、furikana.sty は必ず文字コードを UTF-8 に、改行コードを LF に変換しなければなりません。今回はぽち自作のものぐさ専用日本語文字コードテキスト変換ツールの enc.pl で変換しました。
$ ./enc.pl furikana.sty $ sudo cp furikana.sty /usr/local/texlive/texmf-local/tex/latex/local/ $ sudo mktexlsr
これで TeX Live 2011 の準備完了です。
\documentclass[12pt,a4j]{tarticle}
\usepackage[expert]{otf}
\usepackage{furikana}
\begin{document}
その\kana{必}{ひつ}\kana{要}{よう}はないわ。
それには\kana{及}{およ}ばないわ。
\end{document}
という内容の TeX のソースファイル homuhomu.tex があるとして、
$ platex homuhomu.tex $ dvipdfmx -f ipaEmbed.map homuhomu.dvi
とすると IPAexフォントを埋め込んだ homuhomu.pdf が出来上がります。
TeX のソースファイルの書き方については Web でいろいろ検索してみて下さい。お財布をはたいてしっかりきちんと勉強してみたい方には [改訂第5版] LaTeX2e 美文書作成入門がお勧めです。
GIMP と GIMP に関連して必要なパッケージのインストールします。
$ sudo apt-get install gimp gimp-plugin-registry icc-profiles libtiff-tools
gimp-plugin-registry は Separete+ が入っているパッケージ、icc-profiles は名前のまんまで Separete+ で使う ICCプロファイルのパッケージ、libtiff-tools は、Separete+ を使って GIMP が作る CMYK化されたTIFF形式の画像を PDF形式の画像に変換する、tiff2pdf というツールの入ってるパッケージです。このままでは日本の印刷向けの CMYK の ICCプロファイルが無いので、Adobe の Adobe ICCプロファイル - ICCプロファイル for Windows - Downloads から AdobeICCProfiles_j.zip をダウンロードして、それを展開した ICCプロファイルファイル群を /usr/share/color/icc/ 以下に配置します。for Windows なんて書いてありますけども気にしなくて大丈夫です。
まずは埋め込みたい RGB の画像ファイル、homuhomu_img.jpg を GIMP で開き、[画像]→[Separete]→[色分解]して次のような設定で CMYK の TIFF形式の画像を作ります。
作った TIFF画像を、GIMPの[画像]→[Separete]→[書き出し]と TIFFファイルとして書き出し、書き出した TIFFファイルを PDF形式の画像ファイルに変換します。
$ tiff2pdf homuhomu_img-CMYK.tif -o homuhomu_img-CMYK.pdf
これで埋め込み用の PDF画像 homuhomu_img-CMYK.pdf の出来上がりです。
TeX のソースファイル homuhomu.tex に、homuhomu_img-CMYK.pdf 埋め込み用の変更を加え、ファイル名を homuhomu_homuhomu.tex に変えます。
\documentclass[12pt,a4j]{tarticle}
\usepackage[expert]{otf}
\usepackage{furikana}
\usepackage[dvipdfmx,hiresbb]{graphicx}
\begin{document}
その\kana{必}{ひつ}\kana{要}{よう}はないわ。
\includegraphics[width=15cm,angle=90,clip]{homuhomu_img-CMYK.pdf}
それには\kana{及}{およ}ばないわ。
\end{document}
extractbb で homuhomu_img-CMYK.pdf のバウンディングボックス情報を homuhomu_img-CMYK.xbb に書き出し、
$ extractbb homuhomu_img-CMYK.pdf
後は普通に platex と dvipdfmx を実行します。
$ platex homuhomu_homuhomu.tex $ dvipdfmx -f ipaEmbed.map homuhomu_homuhomu.dvi
こうして文章と一緒に、印刷用に CMYK化された画像も埋め込まれた PDF文書 homuhomu_homuhomu.pdf が完成します。
埋め込み用画像作成や埋め込みの説明で、途中経過の画像ファイルや完成品の PDF文書が無い事を不審に思われるかもしれませんが、それはただ単純に、描いた方がサンプルとしての掲載を了承してくれるほむほむの絵を用意出来なかったからです。
自分が描いたほむほむをサンプルに使っても良いよ、と言って下さる奇特な方がいらっしゃいましたら、twitterアカウントの pochimarui へお知らせ戴くか、下記のメールアドレスへご連絡下さいませ。
動作確認環境 : Debian GNU/Linux 7.0 wheezy